電話法律相談 よくあるご質問
会員限定で行っております電話法律相談に寄せられた相談内容で、件数の多いものを取りまとめ、本会顧問弁護士の回答と併せて掲載いたしました。 是非、ご参考にしていただければと思います。
電話法律相談 よくあるご質問
明渡し
昭和40年築の物件を賃貸しており、建物は老朽化が進んでいるが、住むには問題がない状態である。貸主が建て替え、もしくは取り壊しを希望した場合、借主に明渡しを求めることはできるか?
- 正当事由がないと明渡しは難しい。今でも居住用物件として使えるのであれば、立ち退き料の支払いも必要になると思われるので、貸主の意向を確認の上対処するべき。
借主の賃料未払いを理由として賃貸借契約を解除し、建物明渡し及び未払い賃料等を請求する訴訟を提起する場合、貸主は借主に対し、実費(内容証明送付料、印紙代、交通費ないし弁護士費用等)の請求をすることはできるか?
- 当該訴訟を提起して勝訴した場合、印紙代は訴訟費用として請求することが認められるが、その他の実費が認められることはない。
賃料未払いの借主につき、契約終了・明渡しの合意ができた。合意書を交わすが、どのような記載をすればよいか?明渡し遅延の場合、遅延損害金として賃料の2倍相当額を定めることは可能か?
- 明渡し日の特定と、明渡し遅延の場合の損害金及び残置物の扱いにつき、決めておくことが望ましい。遅延損害金については、議論はあるが、その性質等から賃料の2倍相当とすることは許容されるものと考えられる。残置物の扱いについては、明渡しの履行方法として定めることは有効と考えられるが、「押しつけられた内容だ」との非難を招かないよう、手続き面では十分な配慮を要する。
契約者とは別人が入居している。賃料は契約者から振り込まれているが、入居者が他の入居者とトラブルを起こしているので、契約を解除し明渡しを求めたい。認められるか?
- 無断転貸であること、占有補助者による他の入居者への迷惑行為等から信頼関係も破綻していると評価でき、解除は可能と考えられる(この点は賃料が支払われていたとしても変わらない)。 ただし、契約者の所在が不明であるため、まずは契約者の所在地確認を弁護士等に依頼することになる。あるいは、裁判所にその旨伝え、借主には解除明渡し訴訟を提起し、公示送達で対応してもらい、それと併せて入居者には直接明渡し請求訴訟を提起する等の方法も考えられる。
オーナーチェンジ・競売
貸主が交代した場合において、新貸主は借主に対し、改めて重要事項説明をして、契約書を作成する必要はあるか?
- 旧貸主と借主との契約は新貸主と借主との間に継承されることから、改めて、重要事項説明をする必要はない。また、法律的には契約書を作成する必要もないが、貸主という契約の最重要要素が変更したことから、契約書は作成し直した方がベターである。
貸主に相続が発生した場合、契約はどのような扱いになるか?
- 相続が発生した場合、相続放棄等がない限り、賃貸借当事者の地位はそのまま移転するため、契約関係は継続することになる。契約書もその時点で名義を変更することが望ましいが、更新等の機会までそのままにしていたとしても、契約書の記載と実際の契約者が異なるという事態が継続しているだけで、相続の場合、登記その他でも当事者の権利関係の承継が明らかになることから、一時的な齟齬があったとしても、あまり問題にはならないものと考えられる。
貸主側に相続が発生し、遺産分割協議が整っていない。この場合、収納賃料等はどのように扱えばよいか?
- 相続によって、賃料債権は相続人に分割されることになる。したがって、1人の相続人に渡すことは問題が生じかねないので、相続人の間で当面(最終的に遺産分割が決まるまで)の窓口ないし管理者を決めてもらうことが望ましい。
貸主が破産した。借主に対し、今後の対応を説明する必要があるが、借主の立場はどのようになるか?
- 基本的に破産手続きの中で、任意売却がなされるのであれば賃借権は存続する。ただし、別除権として抵当権が実行された場合、平成16年4月1日以降の借主は競落人が貸主の地位も承継するとの合意がある場合や、競落人が改めて借主との間で賃貸借契約をする場合を除き、明渡しが余儀なくされる。
オーナーチェンジで敷金が引き継がれないのは、どのような場合か?
- 競売による取得の場合には、抵当権に対抗できない借主との間の賃貸借関係は競落人には承継されず、敷金関係も承継されない。
解約・解除
建物賃貸借で、事業用の場合と居住用の場合とで、解約申入れに当たっての扱いは異なるか?
- 事業用であれ居住用であれ、普通借家契約における解約申入れの要件に変わりはない。したがって、まずは契約で中途解約が認められているかを確認し、認められていれば、次に正当事由の有無と立ち退き料の必要性について確認することになる。
解約申入れは口頭でも可能か?
- 法律上は口頭でも可能であるが、解約申入日及び解約の効力が生じる日を明らかにするべく、できるだけ書面での解約申入れとするべきである。
建物賃貸借契約における借主から貸主に対する解約申入れの期間は3ヵ月であるにもかかわらず、借主が1ヵ月前の解約申入れをして建物を明け渡した。この場合において、貸主は借主に対し2ヵ月分の賃料を請求することはできるか?
- 原則として請求することができる。
中途解約の場合の違約金の定めは有効か?
- 金額が合理的で相当な範囲である限り、次の入居者が一般的に決まるまでの期間の賃料相当額や、投下した設備投資等の費用を平均的な損害額として違約金として定め、請求することは明確な合意を前提として有効であると考えられる。
解約による立ち退き料につき調停で争われている。借主からは500万円の立ち退き料を求められており、相場から大きく乖離しているように思えるが、従う必要はあるか?
- 立ち退き料については一般的な基準はなく、個々の案件ごとに考えていくしかない。調停であれば、基本的には双方どこまで譲れるかを探るという性格上、必ずしも相場や法的根拠を伴わないこともあり得る。納得できなければ訴訟に移行して、立ち退き料の合理的金額を判断してもらうことも検討するべき。
商業ビルにつき、ダーツバーとして利用することを目的として契約したテナントが、当該物件でホストクラブを開いた。目的外利用として契約解除は可能か?
- ダーツバーとホストクラブでは、営業の性質や利用者等も大きく異なることから、目的外利用に該当し、かつ、信頼関係破壊の要素も満たし得ると考えられる。是正勧告をした上で、その対応も考慮して、契約解除の方向で検討することは可能と考えられる。
居住用の建物賃貸借契約を締結している借主が、約10年前から当該建物を事業用(店舗)として使用・収益している。貸主は、用法違反を根拠として当該賃貸借契約を解除することができるか?
- 貸主は10年間もの間、借主が当該建物を事業用として使用・収益していることを放置していたとすれば、信頼関係破壊とまで言えず、契約の解除は困難であると思われる。
ペット飼育禁止のアパートで、犬を飼っている借主がいる。犬はおとなしく、鳴き声や臭い等のトラブルはまだ生じていないが、契約解除することは可能か?
- ペット飼育の問題は、鳴き声や臭いだけではなく、体毛等によるアレルギーの問題もあり、現在トラブルになっていなくても、ペット飼育禁止を前提に入居した他の借主との関係で、今後トラブルになる危険性がある。ペット飼育自体が契約違反行為であることは確かであり、猶予期間を設けて是正を求め、それでも応じなければ、信頼関係破壊として契約解除を求めることは可能であると考えられる。
貸主との契約
管理委託料の制限はあるか?
- 法律上の制限はない。なお、賃貸不動産管理業協会(現:全国賃貸不動産管理業協会)が平成19年に会員を対象に行ったアンケート調査によると、居住用では月額賃料の5~7%が多かった。
建物賃貸借契約の管理委託を受けている物件につき、貸主代理で賃貸借契約をしても法律上問題はないか?
- 建物賃貸借契約管理委託の内容に「賃貸借契約の代理」が入っていれば、貸主代理で契約することについて法律上の問題はない(なお、管理委託契約書の委託条項に「賃貸借契約の代理」を明記しておくべきである)。
貸主の代理人の立場で契約をする場合、契約書の貸主欄にはどのように記載すればよいか?貸主は自分の名前を出したくないと言っているが、可能か?
- 「貸主○○ 代理人××会社」という表示が一般的である。代理人による契約が有効であるためには、授権行為の存在が必要であり、かつ、契約上の権利義務等の代理行為による効果は貸主本人に帰属することから、貸主名を記載しないというのは問題がある。貸主名を出したくないのであれば、サブリースの形にするべきではないか。
大雪で、物件の屋根から落ちた雪により駐車場に停めてあった借主の車の屋根が破損する事故が発生した。この場合の貸主・管理会社の責任は?
-
天災・不可抗力の部類に入るが、土地柄からある程度は雪の量等が予見でき、結果回避の措置を貸主側の義務とすることができるのであれば、債務不履行責任が発生し得る。また、雪の落下が建物の構造上の瑕疵等に基づくものであれば、工作物責任も考えられる。
したがって、貸主としては上記責任が100%発生しないということが言えない場合には、一定の見舞金レベルの対応が必要ではないか。
管理会社としては、管理業務として雪による損害回避までを受任していたのかが問題であり、その点が委託の範囲ではなく、緊急行為としても想定し得ない場合であれば、一般的には責任を負うこと(債務不履行・不法行為責任上の違法性・過失)はない。
借主との契約
契約書と重要事項説明書とが異なった場合、どちらが優先されるか?
- 契約書が優先される。ただし、重要事項説明と異なる内容であるため、借主への情報提供が不十分として一定の条項につき無効ないし不存在と評価される可能性がある。
未完成のマンションの賃貸借契約を締結することは可能か?
- 建物が未完成であり、賃貸借契約の目的となる建物が存在していないことから、同建物を目的とする賃貸借契約を本締結することはできない。したがって、予約ないしは、建物引渡しを停止条件とする契約とするべきである。
現在、ペット飼育禁止条項を入れて賃貸借契約を結んでいる物件を、ペット飼育可に変更したい。法律上の問題はあるか?
- ペット飼育禁止条項は、借主に対し、ペット飼育禁止義務を負わせるものであり、本件建物をペット飼育可の物件にしてはならないとの効力はない。したがって、建物をペット飼育可の物件にすることについては問題ない。 ただし、契約条項にペット飼育禁止が入っていることを理由として契約をした借主もいないとは限らず、ペット飼育可とした場合、その借主との関係で問題になる可能性がある。そのため、後々のトラブルを防止する観点から、建物をペット飼育可の物件にすることを各借主に説明し、かつ、同意書を受領しておくことが望ましい。
学生用賃貸住宅の契約をする場合、賃貸借契約書の目的欄に「学生のみに賃貸する」旨を記載すればよいか?
- 基本的にはそれでよい。しかし、必ずしも学生が社会人になったタイミングで当該借主に建物の明渡しを求めることができるわけではない。借主が社会人になったタイミングで確実に建物の明渡しをしてもらうためには、借主が卒業する時期を賃貸借契約の終了とする定期借家契約を締結するべきである。
建物の1室を3人でルームシェアをして住む人に貸す場合、3人を借主としなければならないか?
- 3人を借主とする契約形態の他、その中の1人を代表として借主とし、他の2人を連帯保証人とする契約形態も考えられる。
原状回復
借主の通常使用を超えた使用により損耗が生じたため原状回復を求めたが、支払わないと言われている。どのように対応すればよいか?
- 原状回復ガイドラインの基準に従い算出したものであれば、その額を敷金から差し引いて返還する。もし、借主が裁判に持ち込んできた場合に備え、ガイドラインベースの算出であることを明確に示せるようにしておくことが大切である。
未成年が借主で、その親が連帯保証人となっている。契約が終了し、退去となったが、物件を確認したところ、ドアが破壊されていたり部屋が汚されていたり、ひどい状況であった。敷金から当該補修費用を差し引き、更に足りなかった費用を請求したところ、借主も連帯保証人である親も「そのような請求には応じない。原状回復は貸主の責任だ」と言われている。どのように対応すればよいか?
- 借主側は、原状回復の問題と損害賠償の問題とを混同している。本件では、原状回復というよりは、明らかに債務不履行・不法行為の損害賠償であって、借主は応じるべき義務がある。また、仮に原状回復の問題だとしても、通常損耗を超えるものであることから、借主負担であることに変わりはない。損害額の算定をしっかりと行った上で、毅然とした態度で請求をするべきである。
退去時修繕につきトラブル。故意による損傷がひどいが、この場合でも減価償却を考慮しなければならないか?
- この場合、原状回復というよりも、端的に債務不履行ないし不法行為(器物破損)と評価できる可能性があるので、当該行為と相当因果関係にある損害を請求できることになるが、損害の算定に当たり、物損については現在価格すなわち減価償却を考慮する考え方が強い。したがって、物損そのものよりも、それによって生じた工事に要する期間、空室期間の長期化に対する空室損料等を考慮して賠償額を検討していくことが懸命ではないか。
ペット飼育可として貸した物件につき、退去時に確認したところ、傷や汚れがひどく、その原状回復に40万円が必要となった。敷金から差し引き、足りない部分は借主に請求したところ、借主から「そもそもペット飼育可であり、通常損耗の範囲に入っているので、応じられない」と主張されている。どのように対応すればよいか?
-
ペット飼育可の物件でも、ペットが付けた傷や汚れが全て無制限で通常損耗ということにはならない。ペットを飼育するに当たっては一定のルールがあり、そのルールを逸脱した部分は、借主の過失、善管注意義務違反の範疇に属し、その原状回復費用はガイドラインベースでも借主負担となる。
裁判になるような場合には、傷や汚れの程度、他のペット飼育者における退去時の状況との比較等を証拠として提出し、上記主張をしていくことが有効である。
事業用建物賃貸借契約の場合の原状回復の方法は?
- 基本的に契約書の内容による。事業用でも最高裁の基準に従い合意の有無が問われるケースがあるので、契約の内容・手続きについては十分留意しておく。契約書上明確になっていない場合には、修繕費用は賃料・減価償却などにより回収済みであるとの原則(これは居住用・事業用を問わない)との兼ね合いを前提に、当事者間で協議の上、範囲を決める。
退去時にハウスクリーニング代を借主に請求したいが、可能か?
- 原状回復には一般にハウスクリーニングの内容は含まれず、それを借主負担とするためには特約が必要である。また、最高裁平成17年12月16日判決の要件(「賃貸人が負担することになる通常損耗の範囲が、賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか」等の要件)を充足する必要がある。
退去時に鍵の取替費用を借主に求めることはできるか?
- 当事者の合意があれば可能。ただし、鍵の交換は次の入居者に貸すに当たって建物の設備の交換と同一であるため、明確な合意がなければ貸主負担が原則と考えられる。
借主の退去後に原状回復でトラブルになっているが、その物件につき新たに入居者の募集をしてもよいか?
- 退去時の状況を写真等でしっかりと記録しておく。原状回復トラブルは契約終了時の問題であるので、トラブルが継続しても、その物件につき新たに賃貸借契約をすることは可能である。
賃貸管理をしている建物につき、貸主と借主との間に原状回復の範囲についての争いが発生した。訴訟となる見込みとなったことから、管理業者が貸主に対し「訴訟の代理はできない」と伝えたところ、「賃貸管理を委託しているのに、訴訟の代理ができないのはおかしい」と主張してきた。どのように対応すればよいか?
- 法律上、原則として弁護士以外の者の訴訟代理は禁止されている(民事訴訟法54条)ことから、訴訟代理をすることは賃貸管理の範囲内ということにはならない。したがって、貸主の発言は法律上できないことを賃貸管理業者に押し付けるものであり、受け入れることはできず、貸主に対しては「法律上認められていないことはできません」と言う他ない。この場合、管理委託契約違反が問われることもない。
更新
賃貸借契約で更新料の取り決めをしてあるが、借主から「無効である」と主張されている。どのように考えるべきか?
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借地借家法に反する特約ではないとして有効とされているが、趣旨の明確化、合理的金額の設定及び手続き面の配慮に十分意を酌む必要がある。
なお、平成23年7月15日には、契約書への一義的かつ具体的な記載があり、額が高額に過ぎない更新料特約を有効とする最高裁判決も下された。
契約更新時において、更新料の支払いを拒否している借主に対し、契約の解除ができるか?
- 契約時に更新料の取り決めが明確になされているのであれば、その不払いは債務不履行である。ただし、更新料の支払い拒否のみをもって信頼関係破壊とまで言えるかは一概には言えない。判例で諸事情を踏まえ解除を認めた例はあるが、もう少し他の材料を揃えてから契約解除等を検討した方がよい。
自動更新に際し、更新料の授受は認められるか?
- 自動更新も合意更新の一種であり、趣旨や金額に合理性があり、契約で明記され借主もその負担を認識していることが明らかであれば、自動更新においても更新料の授受をすることは否定されないと考えられる。
更新料と更新事務手数料の違いは何か?
- 更新料は、貸主・借主間で賃貸借契約上の取り決めとして授受される金銭であり、更新事務手数料は、更新事務を行った管理業者等が当事者から労務報酬として授受される金銭である。したがって、当事者及び趣旨が異なる。
契約更新時に、契約書作成代として借主に金銭を請求することは可能か?
- 当事者間の合意によらず、一方的に請求することは問題が生じ得る。あくまでもその費用の根拠である、黙示的な借主との間の契約書作成委託契約の存在や、借主に利益をもたらす事務管理であるといった関係を明らかにした上で、請求することになる。金額の妥当性も十分に説明できるようにしておくことが望ましい。
借主から更新事務手数料をとることの根拠及び重要事項説明書の記載方法は?
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借主との関係は委任関係でないことから、事務管理としての構成になる。そうすると、借主に請求できるのは、借主が得た利益に見合う実費相当分に限られ、例えば賃料の1ヵ月分とすること等は問題となる可能性が高い。
また、単に重要事項説明書に「更新事務手数料 あり」と記載するだけで全て解決するというわけにはいかず、そもそも、上記の法律構成に基づく明確な根拠と合理的金額を設定し、借主に対し十分な説明が要求されるものと考えられる。
契約の更新時期がきたので、更新契約書を作成し、署名等の上返送してもらうよう借主に送付したが、書類は戻ってきていない。この場合、契約はどのような扱いになるのか?
- 借地借家法の法定更新があることから、更新契約書を取り交わしていなくても、契約が存続していることは間違いない。ただ、法定更新か合意更新かという点については、賃貸借契約は口頭の合意でも成立する契約関係であり、更新においても同様であること、要は借主からの書面が返ってきていないだけであり、契約条件等の内容面で争いが生じているわけではないことに鑑みれば、黙示の更新の同意があったとみなして、合意更新がなされたと扱ってよいのではないか。
契約の更新時期がきたが、借主と連絡が取れず更新手続きをしていない。賃料の支払いも遅れがちで、貸主としては契約解除したいと考えているが、可能か?
- 更新拒否の手続きをとっていない以上、一応法定更新された状態となっている。ただし、期間の定めのない契約となったので、解約申入れは可能。ただ、正当事由が具備されるか難しい問題があるため、賃料が滞納しがちなことと借主の責任(居留守等)において連絡が取れないことが、借主としての善管注意義務に反するとして契約解除を求め、かつ契約継続の意思があるのであれば、更新後の契約内容の協議の場に着くよう要請する。もし、それも無視するようであれば、信頼関係破壊として解除明渡しを断行することも検討するべき。
建物賃貸借契約が法定更新となった場合の契約期間の考え方は?
- 「期間の定めのないもの」となる(借地借家法26条1項)
契約の更新に当たっては、契約条件は従前の契約内容に拘束されるか?
- 合意更新の場合、合意により契約条件を見直すことができる。
契約の更新拒否をする場合、借主に対し、いつまでにその通知をすればよいか?
- 手続的には1年前から6ヵ月前までに更新拒否の通知をする必要がある(借地借家法26条1項)。なお、更新拒否をする場合、実体的に当該更新拒否が正当事由を具備している必要がある。
極めて古い建物につき、契約の更新拒否をすることは可能か?
- 「建物の現況」が、賃貸継続の前提を欠くということであれば、更新拒否の正当事由はあると考えられる。
建物賃貸借契約の更新契約書を作成する場合のポイントは?
- 建物賃貸借契約の更新契約書の作成方法に決まったものはない。ただし、①更新前の契約と更新後の契約の継続性、②更新前の契約と更新後の契約の変更部分(少なくとも、賃貸借契約期間の変更はある)、を明らかにしておく必要がある。
敷金・敷引き
敷引き特約は一切無効となるか?
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敷引き額の根拠等の契約書やそれ以外で十分に説明し、借主が十分に認識した上での明確な合意が存在すれば、額が相当である限り有効であると考えられる。
なお、平成23年3月と7月には、契約書に一義的かつ具体的な記載があり、額が高額に過ぎない敷引き特約を有効とする最高裁判決が下された。
敷金を賃料の1ヵ月分と設定している賃貸借契約で、仮に、賃貸借契約期間中に賃料を減額した場合、敷金の一部を返還する法律上の義務はあるか?
- 敷金は必ずしも賃料と連動するものではなく、かつ、契約書に賃料の○ヵ月分と規定されているときは、通常、その「賃料」とは契約当初の賃料と解釈され得るので、そのような法律上の義務はない。
道路拡張のため建物を取り壊し、その建物の借主に退去してもらうこととなった。この場合、借主に敷金を全額返還しなければならないか?
- 建物を取り壊す場合、建物の原状回復をすることはない。したがって、賃料滞納等がなければ敷金は借主に全額返還する必要がある。
敷金を管理会社が預かることに、法律上の問題はあるか?
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特に法律上の問題は見当たらない。ただし、敷金を預かっている管理会社が破産してしまい、トラブルとなることがあるため、敷金を預かる場合、預り金口座を作って、管理会社固有の財産と分別して管理するべきである。
なお、賃貸住宅管理業者登録制度上の登録業者は、分別管理をしなければならないとされている。
貸主が破産した場合、借主の敷金はどのような扱いになるか?
- 破産により貸主の財産がなくなることから、借主の敷金については戻ってこない可能性が高い。
敷金返還に係る手数料(振込手数料等)は貸主と借主のどちらの負担になるか?
- 敷金返還は貸主の義務であることから、敷金返還に係る手数料は貸主の負担である(民法485条)。
敷金・礼金に消費税はかかるか?
- 敷金は預り金で返還するので非課税であるが、礼金は返還しないので課税である。
死亡・自殺
物件内で借主が自然死し、10日後に発見された。この場合、次の入居希望者に対し、その旨伝える義務があるか?また、保証人等に原状回復費用の請求ができるか?
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自然死は通常の使用の中で発生し得る(どの物件でも可能性はある)事態であり、事件や自殺でないことから、心理的瑕疵の問題も発生しにくいが、義務ではないにしても契約締結の際に情報として伝えておくことが無難ではないか。
また、特別な原状回復費用及び臭気等が完全になくなるまで物件を賃貸できない間の賃料相当額を、話し合いの中で保証人に負担を求めることは可能ではないか。
病死等の自然死があった物件の隣接住戸の媒介の際も、隣で自然死があった事実を説明しなければならないか?
- 該当物件そのものではなく、その隣接住戸であれば、基本的には入居希望者から問い合わせがあれば説明するというスタンスで問題はないと考えられる。ただし、普通の人がその事実を知ったら、隣(もしくはその建物内の他の部屋)を借りることを躊躇する程度の状況であれば、問い合わせがなくても説明するべき。
自殺・他殺物件につき、いつまで説明義務があるか?
- 契約締結の意思決定に重要な事実は説明すべき義務があり(宅地建物取引業法47条)、自殺・他殺物件はその対象となる。説明義務を負う期間については、法律で説明期間を定めた規定もなく、また、説明義務の期間について明確に判断した裁判例もないことから、一律に「何年である」とは言えない。
賃貸マンションの共用部分から、当該マンションの入居者が飛び降り自殺をした。この場合、当該マンションの他の部屋の賃貸についても重要事項として説明しなければならないか?
- 共用部分からの飛び降り自殺が、当該マンションの各部屋の賃貸についての重要な事項となるか否かは難しい問題である。建物(専有部分)その物の瑕疵とは言えない一方、共用部分における自殺は当該マンション全体の瑕疵とも言える。したがって、重要な事項として説明しておく方が無難である。
A(貸主)とB(借主)との間に居住者をC(借主の実弟)とする賃貸借契約が締結されていたが、Cが物件において自殺した。
①AはBに対し、Cの自殺に関する損害賠償を請求することができるか?
②また、できるとすれば、いくら請求することができるか?
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①できると思われる(東京地方裁判所 平成19年8月10日判決 参照)。なお、自殺したCは借主本人ではないが、借主BにはCが物件において自殺をしないようにする義務があったものと解し得ることから、結論は変わらないと思われる。
②上記裁判例が同様の事案において、自殺から1年間の賃料全額相当額、自殺から2年目及び3年目の賃料の半額相当額の合計額を損害と判断した(なお、中間利息は控除した)のが参考となる。
借地関係
借地契約の解約は書面でなければならないか?また、建物を取り壊さず、登記も変更しないで明渡しをして、地主側で将来取り壊すとしている場合でも、解約は制限されないか?
- 解約は口頭の合意でも可能であり、合意解約の場合、建物の存在も解約の制限にはならない。ただし、解約があったという事実を後日証明する機会に備え、第三者立会いでの合意の存在の記録等を作成しておくことが大切である。
借地権の更新に伴い、高額の更新料が請求されたが、支払わなければならないか?契約書には更新料として「相当の額を支払う」旨規定されている。また、更新しない場合、建物買取請求権を行使すると、どの程度回収できるか?
- 更新料は当然に発生するものではなく、契約で決まるものである。契約書に規定されている「相当の額」は、地代額と実際の土地の価格、借地権価格などを考慮して算定されるものであり、その額と現在提示されている額とに大きな乖離があれば、その点を争っていくことになる。 また、建物買取請求の場合の価額は、建物及びその付属物の「時価」である(借地権価額は含まない)。
借地契約終了に伴う建物買取請求権に関して、借地上の建物が不要となったとして、借主が期間満了前に借地を返却したいと申し出てきた。地主に建物買取りの義務はあるか?買取りの義務がない場合、どのような解決策が考えられるか?
- 期間満了前に建物買取りの義務はない(借地借家法13条)。解決策としては、地主が建物を任意に買取るか、借地権者が借地権譲渡をするかとなる。後者の場合、地主の承諾の問題となる。
Xは自らが所有する土地とYが所有する土地(以下、併せて「本件土地」という)に1棟の建物を建てて、店舗兼住居として利用している。なお、本件土地に占めるY所有の土地の割合は約1割である(ただし、XとYとの間に契約書もなければ、XはYに対し賃料を支払っていない)。Xは店舗及び住居を取り壊し、本件土地を貸し駐車場にしたいと考えている。XはYの許諾なく、本件土地全体を駐車場にしてしまっても問題ないか?
- Y所有土地分につき、Xが所有の意思を持って20年占有することによって、所有権の時効取得をしない限り、その処分権限はYにある。したがって、本件土地を駐車場に用途転用することが処分行為に該当するとすれば、XはYの許諾を得なければ、本件土地のうちY所有部分については駐車場とすることはできない。
広大な土地を賃貸することを検討しており、当該土地の一部に小さいプレハブ小屋が建っている。借主は当該土地で中古車販売業を営むとのことであるが、この場合において、当該土地を賃貸した場合は借地借家法が適用されるか?
- 土地の賃貸借において借地借家法が適用されるのは、借主が「建物を所有する目的」である場合である。本件において「借主は当該土地で中古車販売業を営む」とのことであるから基本的には「建物を所有する目的」ではないと言えるので、借地借家法は適用されないと考えられる。 なお、プレハブ小屋の賃貸借と言われないように注意を要する。
工事をする際の一時的な事務所として使用するためにプレハブを建てて使用する場合、土地の賃貸借契約を締結する方法としては一時使用目的賃貸借契約でよいか?
- 目的や存続期間が一時的であることから、一時使用目的賃貸借契約でよいと思われる(借地借家法25条)。
貸主と借主が期間20年の事業用定期借地契約を締結し、現在12年ほど経過した。借主が貸主に対し、同契約の解約申入れをする場合、借主は残り8年分の賃料を支払う必要があるか?なお、同契約には借主による期間前の解約申入れについての特約はない。
- 契約上は、借主は貸主に対し、残り8年分の賃料を支払う必要があることになる。
修繕・維持保全
契約期間中に備え付け設備が破損した場合の修繕を借主負担とできるか?
- 契約期間中の備え付け設備に係る修繕は、特約がなければ民法上貸主の負担ということになる。契約段階で明確に合意をしておくことが必要である。
X(土地所有者兼貸主)は、Y(借主)との間で、土地とその土地上の倉庫及び工場についての賃貸借契約を締結している。
①倉庫ないし工場の外壁に問題が生じた場合の修繕費用はXとYのどちらの負担になるか?
②雑草の除去費用はXとYのどちらの負担になるか?
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①XはYに対し、本件物件を使用及び収益させる義務を負い(民法601条)、かつ修繕義務を負う(同法606条)。したがって、倉庫ないし工場の外壁に問題が生じた場合の修繕費用は貸主たるXが負担することになる(ただし、倉庫ないし工場の外壁に生じた問題が、Yの故意・過失に基づく場合はYが負担する)。
②原則として、雑草の除去費用はXが負担することになるが、本件においてはXもYも事業者であることから、話し合いで雑草の除去費用をYが負担することになれば、その話し合いの結果に従うことは問題ないものと思われる。ただし、合意書は交わすべきである。
地震により、備え付けのレンジが落下したり、人が転んだりしたことによって壁に穴が開いてしまった。修繕費用は貸主又は借主のどちらの負担になるか?
- 破損の原因が地震であり、かつ、レンジの落下等が借主の注意義務違反と評価しにくいため、原則として、賃貸借契約上の貸主の修繕義務の範疇に入ると考えられる。
泥棒が賃貸建物の窓を割って侵入した場合、窓の補修費用は貸主と借主のどちらの負担になるか?
- 泥棒が賃貸建物の窓を割って侵入したことについては、借主には過失がない。とすれば、借主に対し賃貸建物を使用・収益させる義務及び修繕義務を負う貸主が、窓の補修費用を負担することになる(もちろん泥棒が捕まれば、法律上はその者に求償することができる)。
建物の貸主には、テレビ用アンテナを設置する義務があるか?
- 現在、家でも事務所でもテレビを見ることができるのは常識と言えることから、「建物の貸主にはテレビ用のアンテナを設置する義務がある」と考えておいたほうが無用なトラブルは回避できるのではないか(ただし、借主の募集に当たり「テレビアンテナがありません」として募集した場合は別である)。
消防設備点検のために、不在者の専有部分に立ち入ることはできるか?
- 契約書に立ち入りの定めがあればそれに従う。長期不在者であれば消防設備点検であれば法定点検であり、人命・財産保護にとって重要であるから、期限を定め、不在で連絡がなければ立ち入る旨通知し、立ち入ることも可能であると考えられる。この場合、親族や保証人の立会いを求めることも検討するべき。
短期賃貸借制度
短期賃貸借制度とはどのような内容か?
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抵当権設定前に締結された賃貸借契約は短期賃貸借制度の適用がなく、抵当権が実行されても、同賃貸借契約が更新される限り借主は退去する必要がない。
一方、抵当権設定後に締結された賃貸借は、短期賃貸借制度の適用により、借主は短期賃貸借期間満了時までは退去する必要がないが、同期間満了時には退去しなければならない。
全ての短期賃貸借が、賃貸物件の競売によって終了するか?
- 平成16年4月1日より前に締結された契約(現在、それが更新されている場合を含む)については、従前の短期賃貸借保護が働き、当然には終了せず、更新拒否の正当事由の中で判断されることになる。また、それ以降の契約でも、全ての抵当権者の同意の登記がある場合には終了しない。
建物に抵当権が設定登記された後、貸主と借主との間において賃貸借契約が締結された。なお、短期賃貸借制度廃止(平成16年4月1日)後である。そして、今般、建物は競売に付されて競落された。借主は建物から立ち退かなければならないか?
- 借主は建物から立ち退かなければならない。ただし、借主は建物の競売における買受人の買受けの時から6ヵ月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない(民法395条)。
駐車場
駐車場に契約者以外の第三者が車をとめている場合、車の持ち主と連絡が取れないが、どのように対応するべきか?
- 明らかな不法占拠なので警察へ相談する(不動産侵奪罪等)とともに、駐車場から他の場所に車を移動した上で引き取りを通知し、それでも対応が無ければ、不法占拠による違約金の裁判をし、その判決をもって動産競売を行う等の方策が考えられる。
駐車場の賃料滞納で、借主と連絡が取れない。解除通知を内容証明で送ったところ受け取っているが、車はまだ駐車場にあり、使用もされている。どのように対応するべきか?
- 解除が内容的にも手続的にも有効であるとして、改めて明渡しを請求する。車の不在時にその箇所の使用を一定程度困難にするような措置をとることも、解除が有効となれば、必要性、相当性の範囲であれば可能と考えられる。
駐車場の借主が、当該駐車場に車をとめていたところ、何者かに車に傷を付けられた。借主から「貸主にも管理責任があるから損害を賠償しろ」と言われているが、この請求に応じなければならないか?
- 当該駐車場は屋外ということであり、借主としても、場合によっては車が傷を付けられる可能性があることは想定し得る(なお、絶対に傷を付けられたくない場合は、高額の賃料を支払って屋根及び壁で囲まれ監視カメラも設置されているような駐車場を借りるべきである)。また、貸主が四六時中、車を見張っていなければならない義務もないため、借主の請求に応じる必要はない。
駐車場の借主が、当該駐車場にとめてあったバイクと接触し、バイク所有者に示談金を支払った。その後、借主から「貸主にも管理責任があるから示談金の一部を負担しろ」と言われているが、この請求に応じなければならないか?
- バイクと接触したのは借主の過失であり、貸主の管理責任とは関係がない。したがって、事故原因につき、管理との関係で特段の事情がない限り、借主の請求に応じる必要はない。
月極駐車場で無断駐車車両の窓ガラスに貸主が警告の貼り紙をしたところ、器物損壊であるとしてガラスの交換費用の賠償を求めてきたが、器物損壊に当たるか?
- 器物損壊とは、物の効用を消失させる一切の行為を言い、貼り紙も「損壊」に該当する。一方、無断駐車車両に対する正当な警告行為として、違法性が阻却される余地も十分あるのではないか。更には、無断駐車による駐車料相当額及び罰金の支払い義務との相殺も考えられ、結果として賠償に応じる必要性はなくなる可能性が高いと考えられる。
賃料改定
貸主が借主に対し、現在の賃料月額26万円を32万円に値上げすると言い出した。仮に、借主が受け入れない場合は、物件から退去してもらうと言っているが、貸主の言い分は認められるか?
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賃料の値上げは、貸主と借主との間で合意ができない場合は、調停を経て、(調停が不成立の場合は)訴訟を提起して勝訴判決がない限り認められない。したがって、本件建物の借主との合意、もしくは「賃料を32万円にする」旨の判決がない限り、貸主は賃料を32万円に上げることはできない。
実際上、借主が現在26万円の賃料を32万円に値上げすることに同意することはほとんど考えられず、また、通常は特別の事情がない限り、26万円の賃料を一挙に32万円に値上げすることを認める判決が出る可能性も低い。そもそも賃料改定に応じなければ契約が終了するとする根拠も不明であり、貸主の言い分は認められないものと考えられる。
賃料改定につき増額幅に制限はあるか?
- 特に制限はなく、借地借家法の賃料増減額請求権の要件に準拠して検討すればよい。ただし、例えば近隣相場が1.5倍になっているから、直ちに1.5倍とできるかについては、相手がいることでもあり、継続賃料の上方硬直性の傾向からもやや難しいものと考えられる。
賃料6万円で募集しているアパートの一室の賃料を5万円にすることに法的な問題はあるか?
- 賃料は個々の契約ごとに決められるものなので、一室のみ賃料を5万円にすることに法律上の問題はないが、賃料6万円で借りている借主が知った場合、クレームがくる可能性が高い。
賃料滞納
賃料滞納が6ヶ月になる借主に対し、どのように対応すればよいか?
- 賃貸借契約を解除し、借主に対し、建物からの退去を求める。その後、連帯保証人等の協力を得て任意での退去を促す。 借主が建物を任意で退去しない場合、法的手段をとらざるを得ない。
賃料滞納が6ヶ月になる借主に対し、明渡しの訴訟を検討している。注意点は何か?
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①信頼関係破壊の要件を満たすことを証明する必要があるため、賃料収納状況及び督促状況が分かる書面を用意する。
②契約解除が有効になされた(相手方が通知を受け取った)ことを示す書類を用意する。
③実際の明渡しの場面では、任意に実行されないと強制執行手続きが必要となるため、例えば、滞納賃料支払いの判決を得ておき、給与債権執行なども視野に入れつつ、任意での明渡し交渉を進めることも検討に値する。
賃料滞納が1ヵ月のみでは、契約を解除することはできないか?
- 賃料1ヵ月のみの滞納では、通常は信頼関係破壊の事情があるとは言えず、特段の事情がない限り、契約を解除することはできない。
賃料滞納者に対し、ドアを開けられないようにすること(カギ交換、ドアロック等)は可能か?また、契約書に明記した場合は認められるか?
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実力を行使して借主を物件には入れないようにして、賃料の支払いや明渡しを強制することは自力救済禁止に触れ不法行為性を帯びる。保証人に働きかけて対応することを第一とし、それでも駄目であれば、裁判も検討するべき。
また、契約書に明記していても、明確な合意の不存在又は公序良俗違反無効等の観点から契約条項がないものと評価されるケースもあるので、それだけで良しとすることはできない。
賃貸借契約書に「借主が3ヵ月間、賃料を支払わなかった場合、貸主は物件に入り、残置物を撤去・処分することに借主は異議がない」との条項がある場合において、仮に借主が3ヵ月間賃料を支払わなかった場合、貸主は本件条項に基づいて物件に入り、借主の残置物を撤去・処分しても問題ないか?
- 本件条項がある場合においても、当該条項は無効または不存在と評価され、貸主が借主の残置物を撤去・処分する行為は自力救済として違法である(浦和地裁平成6年4月22日判決参照)。
賃料滞納常習者に対する更新拒否は可能か?
- 賃料滞納が恒常的であれば、当該賃料相当の支払い能力が無いと判断され得る。更新拒否の正当事由の判断要素中の賃貸借の従前の経緯の中で考慮される。また、契約解除も可能と考えられる。
賃料滞納者である借主と連絡が取れない。同居人に対し、請求できるか?
- 同居人が妻や内縁関係にある者の場合は、日常家事連帯債務として請求可能。また、無断転貸と構成しつつ、同居人からいわゆる転借料を直接請求するというテクニックもあり得る。同居人を連帯保証人とするなど、契約時点で対応を検討しておくことも重要である。
賃料滞納につき、督促をする場合において、それに要する経費を合わせて請求することは可能か?
- 一定の経費の支払いが債務不履行との間で因果関係が認められれば、賃料滞納という債務不履行に伴う損害賠償として、法的には請求対象となり得る。ただし、手続きに要する弁護士費用は、債務不履行による損害とは認められないと解されている。
内容証明郵便による賃料督促の場合、管理業者名義で行うことは、弁護士法違反となるか?
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内容証明郵便による請求は法的な意味を有する請求であり、法律事務に当たるので全て弁護士法に触れるという見解がある。しかし、内容証明郵便自体には執行力はなく、あくまでも通知の事実の証明にとどまること、請求の履行を促すのは事実上の効果に過ぎないことに鑑みれば、単に滞納の事実を告げ契約に従い支払うよう求める書面であれば、実質的に弁護士法違反とは言えないと考えられる。
一方、借主側が支払いを拒否していたり、他に法的論点を含んでいたりする場合には、弁護士法との関係が問題となるので貸主本人名義で対応するべきである。
全ての契約につき、賃料等の遅延利息の上限は14.6%か?
- 消費者契約法の適用がある居住用で個人が借主の契約については14.6%。それ以外については消費者契約法や利息制限法等を参考にしつつ、当事者間での合意内容に基づく。
①未払い賃料の時効期間は?
②未払い賃料は少額訴訟制度を使って、連帯保証人に請求することはできるか?
③少額訴訟における請求は60万円が限度であるとのことであるが、未払い賃料が90万円ある場合は、少額訴訟制度は利用できないか?
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①5年である(民法169条)
②金銭支払い債務であり、代替的行為義務であるのでできる。
③一部請求の形にすればできる。ただし、少額訴訟を2回提起することになる。
定期借家契約
定期借家契約の契約書は公正証書で作成する必要があるか?
- 書面は必要であるが、公正証書でなくてもよい(借地借家法38条1項)。
定期借家契約に借主からの中途解約条項を入れることに問題はあるか?
- 中途解約条項の内容が公序良俗に反するような内容ではない限り、特に問題はない。
定期借家契約で契約期間を10年とし、中途解約の場合、2年分の賃料相当の違約金をとる契約は有効か
- 判例で、普通借家につき、中途解約の違約金を1年分だけ認めた例はあるが、居住用については、2年分は平均的な損害額を超える特約として、消費者契約法に照らし問題とされ得る可能性もある。
4年の定期借家契約で、3年半経過時点で借主から即時解約の申し出がなされた。中途解約の特約やその際の違約金に係る特約の定めはないが、残存期間の6ヵ月分の賃料を請求できるか?
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定期借家契約の場合、法令に定める中途解約事由に該当せず、かつ中途解約の特約がない場合には、借主からの一方的解約は認められない。したがって、この場合の解約は合意解約と評価されるが、合意解約に際し、その条件として一定の金銭給付を定めることは可能である。
定期借家契約の場合、貸主においても期間満了までの家賃収入の期待があり、それは法的に保護されるべきであること、本件では賃料の6ヵ月分相当であり客観的に見ても借主に過度の負担を課しているとは言えないこと、平均的な損害額と評価し得ることから、当該条件のもとで解約を取り決めることは許容されるものと考えられる。
定期借家契約で、期間満了後も退去しない借主がいる。8月末を区切りとして明渡し猶予の合意書を取り交わしたが、10月になっても借主が退去せず、連絡も取れなくなった。賃料相当額の振込は続けられているものの、早急に明渡しを実現するには、どのように対応すればよいか?
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契約終了につき正規の手続きがなされているのであれば、明渡しのための判決を得て強制執行する(賃料相当額の支払いがあったとしても、それは損害賠償であって、賃貸借が継続しているわけではない)。明渡し猶予の合意書段階で即決和解手続きをとっておけば手続きが簡素化できた。
また、合意書に違約金の定めがあれば、違約金も請求する。保証金の返還については、委託業務の一環としての家賃徴収・預かり分と相殺する。それでも保証金額に満たないときは、契約書の返還等と同時履行の関係に立つとして、返済を迫る方法等が考えられる。
定期借家契約で期間満了したが、借主から「あと少し明渡しを猶予してほしい」との要請があった。この場合、契約関係をどのように整理しておけばよいか?
- 明渡し合意の期日まで、定期借家の再契約をすることが考えられる。別な方法として、契約を終了したと扱い、「明渡しにつき○月○日まで猶予する。その間賃料相当損害金を支払う」といった内容の合意書を作成しておくことが考えられる。
居住用建物賃貸借で、普通借家契約を定期借家契約に切り替えることは可能か?
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平成12年3月1日よりも前に締結された居住用の普通借家契約については、定期借家契約への切り替えが法律で禁止されている(「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法附則第3条」参照)が、平成12年3月1日以降に締結された普通借家契約については、定期借家契約に切り替えることができる。
ただし、一般に普通借家よりも定期借家は借主にとって不利と考えられていることから、貸主は借主に対し、切り替えのデメリットを十分説明しておかないと、当該切り替えが後々無効とされる可能性があることに注意を要する。
なお、事業用であれば、普通借家契約の定期借家契約への切り替えは制限されない。
逆に、定期借家契約を普通借家契約に切り替えることは可能か?
- 普通借家契約の方が定期借家契約よりも借主に有利であることから、問題なく切り替えができる。
定期借家契約の期間満了の事前通知を、期間満了前の「1~2年前」とすることは可能か?
- 期間満了の事前通知時期を変更することはできない(借地借家法38条4項)。
定期借家契約で、期間6ヵ月~1年未満の場合、法令で定めのある契約終了6ヵ月前の通知はどの時点で行う必要があるか?
- 借地借家法では、定期借家における終了通知は、期間1年以上の場合に要求される。したがって、6ヵ月~1年未満の契約では、終了通知は法律上の要件ではなく、あくまでも借主への注意喚起のための行為なので、通常契約終了時に明渡しができるよう、その準備期間を考慮した時点での通知であれば十分であると考えられる。
定期借家契約の再契約において、契約条件が前契約とほとんど変わらない場合、変更点等のみを明記し、それ以外は従前の契約内容と同様であるといった簡易の契約書でもよいか?
- 再契約は従前の契約とは別の契約であることから、再契約の書面の作成は必要である。
定期借家契約の再契約において、媒介業者が得ることのできる報酬限度額の定めはあるか?
- 再契約も法律上は新規契約と同じであることから、国土交通大臣の定める報酬規程により、双方から合わせて賃料の1.1ヵ月相当分を上限として報酬を受けることができる。
定期借家契約の再契約において、礼金を授受することは可能か?
- 再契約も法律上は新規契約と同じであることから、新規契約に伴う金銭支払いの合意は、再契約でも等しく有効である。ただし、礼金の趣旨(賃料の前払い等)をよく検討しておくことが大切である。
定期借家契約の再契約において、改めて重要事項説明をしなければならないか?
- 再契約も法律上は新規契約と同じであることから、改めて重要事項説明をしなければならない。
入居前トラブル
入居希望者が契約を破棄ないし延期してきた。入居希望者の責任及び入居希望者を紹介した業者の責任は、どのように考えられるか?
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契約が成立していたのであれば、契約上の義務違反としての損害賠償責任を、まだ成立していない場合でも、特別な仕様を貸主側で用意しているとか他の入居希望者を断っていた等の事情があれば、契約締結上の過失としての損害賠償責任を負うこともある。
そのような入居希望者を紹介した業者の責任については、媒介報酬を受け取っていたのであれば、契約が成立しない場合には少なくとも報酬分は返還する必要がある。
入居希望者から「この物件に入居したい。ただし、エアコンを付けてくれることが条件である」と言われ、エアコンを取り付けたら、「やはり入居をやめる」と言われた場合、エアコンを取り付けた貸主は入居希望者に対し、何も請求できないか?
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貸主と入居希望者との間には賃貸借契約は締結されていないので、賃貸借契約上の責任追及をすることはできない。しかし、契約締結上の締結理論(「契約は成立しなければ、当事者間に何らの債権債務関係も生じないものであるが、契約成立に向けた交渉の結果、当事者の一方が相手方に対し契約の成立についての強い信頼を与えたのにもかかわらず、この信頼を裏切って契約交渉を一方的に打ち切った場合は、信義則上、一種の契約上の責任として、相手方が被った信頼利益の侵害による損害を賠償するのが公平に適するものというべきである」との理論)に基づき、貸主は入居希望者に対し、信頼利益(無効の契約を有効と信頼したために失った利益)につき損害賠償を求めることは可能であるが、物件に新品のエアコンが付いており、次の入居者がそのエアコンを利用できる状態ではあることから、エアコン購入額全額を損害として責任追及することは難しい。
なお、入居希望者から「この物件に入居したい。ただし、エアコンを取り付けてくれることが条件である」と言われてエアコンを取り付ける場合、①入居希望者の依頼に基づきエアコンを取り付けること、②仮に入居希望者が入居しない場合の損害賠償額の予定を記載した書面を交わしておくことが望ましい。
契約書の署名等はまだであるが、物件を特定し、主な契約条件も決め、手付金も賃料の1ヵ月相当分を貸主に入れていた。ところが、急遽入居希望者から「契約しない。まだ契約は成立していないから、預けていた金銭を直ちに返せ」との連絡があったが、どのように対応すればよいか?なお、この入居希望者との間の契約に際し、貸主と交渉の上、先約者を断って物件を押さえた経緯がある。
- 賃貸借契約は口頭でも成立し得るので、契約は成立し、その一方的解約と捉えることが可能である。また、契約が成立しているとまでは言えなくても、契約締結上の過失として、一方的な破棄は相手方への損害賠償責任を発生させる。その意味において、入居希望者側が主張するような「無条件での契約締結拒否(解約)が当然に認められる」という前提には誤りがある。 ただし、実際に入居しないことから返還拒否し得る損害額を十分に吟味する必要がある。例えば、先約者を断ったという事情から、予想を超えて空室期間が発生するということが言えるか、その他損害と言い得る状況があるか等を検討するべき。
媒介
賃貸借の媒介において、専属専任契約は可能か?
- 賃貸借の媒介における専属専任の規制は宅地建物取引業法上にはない。契約自由の原則の中で、依頼者との明確な合意のもとに同様の契約をすることは可能である。ただし、その場合の報告のあり方等は、宅地建物取引業法34条の2に準じること等を検討するべき。
賃貸借の媒介において、借主から媒介手数料1ヵ月分をいただき、貸主から広告料名目で1ヶ月分をいただいているが、このような扱いに問題はないか?
- 名目は広告料でも、実質が媒介業務に対する手数料であれば、宅建業法に反することになる。貸主からの費用については、特別の依頼に基づく費用であるとか、管理業務の一環である募集準備のための物件の清掃等の費用である等の位置付けをした上で合理的な金額設定をし、契約書等でその旨を明確にしておくことが大切である。
賃貸借の媒介において、手数料を値下げすることに法律上問題はあるか?
- 報酬基準の定めは、報酬の上限を定めているものであるので、減額することについては特に法律上の問題はない。
賃貸借の媒介において、他の宅建業者と共同で媒介した場合、重要事項説明はどのように行えばよいか?
- 共同で媒介した業者全てが重要事項説明義務を負っている。ただし、代表を決めて重要事項説明をすることでもよいとされている(なお、この場合でも他の業者は代表者の重要事項説明義務違反によって生じた損害については免責されるわけではない)。
保証人
連帯保証人の承諾書の捺印は、実印でなければならないか?
- 実印でなくても、連帯保証人が自ら意思表示をしたという形でその名義の捺印があれば問題ない。ただし、実印であれば印鑑証明書により本人が押したことが明確に推認されるため、実印が取れるのであれば実印にしてもらったほうがよい。
現在、建物賃貸借契約を締結するに当たり、保証人を付けてもらっている。契約の更新の際に、改めて保証人の署名・捺印をもらわなかった場合はどうなるのか?
- 原則として、保証人は更新後の契約についても責任を負うとするのが判例の立場である。
賃貸借契約の自動更新条項に基づいて賃貸借契約が自動更新した場合、連帯保証人は自動更新後も責任を負うか?
- 連帯保証人は賃貸借契約の自動更新後も責任を負う。ただし、信義則上、責任が制限されることがある。
連帯保証人は、賃貸借契約の借主が負う原状回復義務についても、借主を連帯して責任を負うか?
- 原状回復に伴う費用については金銭債務なので、連帯保証人も責任を負う。
建物の借主が死亡した。賃貸借契約の連帯保証人である父親に対し、原状回復の協力を求めたところ、「借主が死亡したら、連帯保証人は関係なくなる」と主張された。借主が死亡した場合、連帯保証人は賃貸借契約と関係なくなり、借主が負っていた原状回復義務を履行する責任を負わなくなるか?
- 借主が死亡した場合でも、連帯保証人は借主が負っていた原状回復義務を履行する責任を負う。
迷惑行為
借主が暴力行為等で他の入居者に迷惑をかけており、警察が介入したこともある。契約を終了させたいが、どのように対応すればよいか?また、立ち退き料は必要か?
- 契約内容・禁止事項に近隣に迷惑をかける行為が規定されていれば、それを使って債務不履行解除をする。この場合、解除なので立ち退き料は必要ない。ただし、迅速に立ち退きを実施するために一定の金額を引っ越し代として支払うことはあり得る。また、争われたときに備えて、実際の迷惑行為の状況を記録に残しておくことも大切である。
借主間のトラブル(騒音問題等)につき相談されているが、どのように対応すればよいか?
- 当事者同士での解決(不法行為による損害賠償等)が基本であるが、貸主を介しての解決(借主の善管注意義務違反としての解除)も考えられる。ただ、いずれのケースでも証拠が必要であるので、本人にその証拠収集活動に努力するよう回答してはどうか。
共益費で一定のゴミ回収費用を見込んでいたが、居住者のマナーが悪く、ゴミ処理に多額の費用がかかることとなった。共益費の値上げを考えているが、可能か?
- 共益費の構成要素のコストが増大するという実質的な根拠があり、そのことを借主に説明し、合意が得られれば増額は問題ない。ただし、増額の合意ができない場合は、そもそもコストが膨らむ原因を作ったマナー違反者を特定し、その者に増額分の負担を求めることを検討する。
その他
賃貸物件の借主が交通事故を起こした。その後、その被害者が警察等で物件名を調べて、管理会社に「借主に会いたいので、部屋番号を教えてほしい」との要請をしてきた。個人情報保護法上、教えて構わないものか?
- 上記のような事情のもとでは、個人情報保護法が適用され、本人の承諾がない限り、情報提供することはできない。ただし、借主本人にとって、被害者と会って謝罪し示談交渉をすることは、今後の刑事責任との関係でも有益なことであるので、そのことを告げて、部屋番号を教えることの承諾を取るか、本人から直接被害者に連絡するように要請することが考えられる。
警察からアパートの入居者調査の申し出があった。どのように対応すればよいか?
- 警察からの正式な依頼に基づくものであれば、個人情報保護法の適用除外事由に該当し、調査に協力することは法令に反しない。ただし、それが正式な警察組織の依頼であるということを明確にしておかないと、後で個人情報保護法違反等と主張される恐れもあるので、調査依頼については書面でしてもらうように要請するべき。
賃貸借契約書について、保管期間は定められているか?
- 特に決められた保管期間はない。一般的な債権の時効は10年なので、賃貸借契約終了から10年経てば一応は法的な問題は時効でクリアできるとは思われる。しかし、万が一の場合に備えて、できるだけ長期間の保管をしておいたほうが無難である。
借主には、町内会費を支払う義務はあるか?
- 一般的には、町内会費を支払う法律上の義務はない。